タックスヘイブン税制で逆転勝訴 最高裁12億円追徴課税取消し
2017/11/02
租税回避地に設立した子会社等を利用した租税回避行為を防ぐために導入された外国子会社合算税制、いわゆる「タックスヘイブン対策税制」。この適用除外要件を満たしているか否かの判断をめぐって争われた裁判で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は10月24日、約12億円の追徴課税処分を認めた二審判決を破棄し、上告人の逆転勝訴が確定した。
タックスヘイブン対策税制には、特定外国子会社等と判定されないための適用除外基準が設けられている。主たる事業が株式等または債券の保有、工業所有権等の提供ではないこと(事業基準)、本店所在地国に主たる事業を行うために必要な事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること(実態基準)。本店所在地国で事業の支配、管理、運営を自ら行っていること(管理支配基準)などのほか、非関連者基準がある。
二審判決では、上告人の主たる事業は「株式の保有と認められるから、事業基準は満たさない」として課税処分は適法と判断していた。
しかし、最高裁は、「(上告人の)地域統括業務は、地域企画、調達、財務、材料技術、人事、情報システム及び物流改善という多岐にわたる業務から成り、地域統括会社として集中生産・相互補完体制を強化し、各拠点の事業運営の効率化やコスト低減を図ることを目的とするものといえる」、「「当該地域において事業活動をする積極的な経済合理性を有することが否定できないため、地域統括業務は株式の保有に係る事業に含まれるものということはできない」と指摘。
また、「措置法66条の6第3項および4項にいう主たる事業は、特定外国子会社等の当該事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定することが相当であり、特定外国子会社等が複数の事業を営んでいるときは、特定外国子会社等におけるそれぞれの事業活動によって得られた収入金額または所得金額、事業活動に要する使用人の数、事務所、店舗、工場その他の固定施設の状況等を総合的に勘案して判定するのが相当」として、「地域統括業務は、相当の規模と実態を有するものであり、受取配当の所得金額に占める割合が高いことを踏まえても事業活動として大きな比重を占めていた」などと判断。上告人は、タックスヘイブン対策税制の適用除外要件を満たしていると結論付けた。